鹿児島県産焼酎が4年連続の生産量・出荷量減少という危機的状況(2010酒造年度の鹿児島県本格焼酎生産量・出荷量から)

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リンク: 焼酎生産量13%減 鹿児島県産前年度比 / 西日本新聞.
リンク: 焼酎出荷 4年連続減 鹿児島県酒造組合発表 : 南日本新聞エリアニュース.

鹿児島県産の焼酎出荷量が減少し続けているという話題です。西日本新聞の記事で

組合は大幅減産の要因として、甲類と乙類を混ぜた低価格の「混和焼酎」人気▽前年度の在庫過多▽08年に発覚した「事故米転売事件」の後遺症-などを挙げている。

という鹿児島県酒造組合の分析を掲載しています。この分析がもし正しいとするのであれば、日本全体の芋焼酎出荷量が減少していなければならないわけです。ところがこんな記事があります。
リンク: 醸界タイムスWeb版: 5月の単式蒸留焼酎出荷 宮崎好調で2ケタ増.
鹿児島県酒造組合の分析が正しいのであれば、この記事に登場する「県内の大手メーカー」、すなわち霧島酒造が過去最高の出荷量を記録するなど、宮崎県の芋焼酎が全体として好調な理由が理解できない事態ということになります。つまり、鹿児島県酒造組合の分析は誤りではないものの根本的なところで大きな誤解があるという結論になると思います。

鹿児島県の生産量などが発表されるたびにたびたびこのBLOGでは普及戦略の見直しを訴えておりました。

リンク: 2005酒造年度の鹿児島県本格焼酎生産量・出荷量まとまる: [酎本]本格焼酎忘備録 本館.
リンク: 2006酒造年度の鹿児島県本格焼酎生産量・出荷量まとまる: [酎本]本格焼酎忘備録 本館.
リンク: 鹿児島県産芋焼酎が出荷減(2007酒造年度の鹿児島県本格焼酎生産量・出荷量から): [酎本]本格焼酎忘備録 本館.

ロックで飲むことを前提としたアプローチをお湯割りも含めた多様な飲み方に仕向けていく努力、そしてマスにアプローチする大手の蔵と差別化個別化でアプローチする中小の蔵がうまく連携しながら回っていくことが重要であること、この2点はいまでも重要性は変わっていないと考えています。
宮崎県の出荷量が伸びているのは、もちろん東国原前知事による宮崎ブームの影響もありますが、そのブームをうまく使って霧島酒造という巨大な蔵が、こだわり商品は芋麹仕込みの「吉助」や季節販売の「赤霧島」など一部にとどめ、基本はレギュラー酒である「黒霧島」を前面にマスへアプローチしつづけました。これは推測ですが、メニューに黒霧島が登場した居酒屋で従来のロックを主体としたメニュー構成から「お湯割り無料」などの表記が加わっていたことから霧島酒造は大手の居酒屋に対してお湯割りの普及活動も同時にしていたものと考えられます。そしてこだわりの中小蔵は、消費者側が驚くくらい各地の焼酎の会へ参加されることで宮崎で生産されている焼酎の多様性を示しつづけました。もちろんこれらは、偶然このブログが訴え続けていたアプローチと同じになっただけでしょう。大小の蔵がうまく両輪になって回転しているのは各蔵の合意に基づくものではなく、お湯割りの普及も文化的な背景を基にしつつもハイボールやチューハイブームなど消費者の低アルコール志向に対応するために採られたマーケティング的な戦略だと思います。しかし、状況としてはこのアプローチ方法はやはり有効であったことが証明された、と私は考えていますし、このやり方が有効であることがわかっている現状では宮崎では大小の蔵がうまく噛み合っていくことでしょう。

本来であればこれらのアプローチは、過去記事を見ていただければわかるように鹿児島焼酎ブームの際に鹿児島の蔵元が取るべき戦略だったのです。しかし、マスへのアプローチを担当するはずの大手蔵は、レギュラー酒の販売促進ではなく、中小蔵が担当すべきこだわり商品による拡販に乗り出してしまいます。一方、中小蔵はどんなに売れ行きがよくなっていてもマスとの違いを直接消費者へ訴求できる試飲会には積極的に参加し続けるべきであったのですが、戦略をミスしてしまったのか、幅広く多くの会に出るのではなく、一部の会のみに絞り込んでしまいました。なにしろ宮崎県酒造組合に加盟する蔵が38、鹿児島県酒造組合に加盟する蔵が113と単純比較で鹿児島の蔵の数は宮崎の3倍近くあるにもかかわらず、いまでも宮崎から参加した蔵と鹿児島から参加した蔵の数がほぼ同数などということもよくあります。そしてその当時、鹿児島の焼酎界隈に影響力を持っていた鹿児島焼酎を扱うサイトや居酒屋も中小の蔵ばかり取り上げており、大手の蔵元と中小の蔵元をうまくリンクさせることはありませんでした。結果として、2007酒造年度以降、4年連続の出荷量減少です。

鹿児島の蔵は今一度足元を見直す時期に来ているのではないかと思います。鹿児島焼酎ブームが去り、宮崎県が、ブームによって知名度を上げた地鶏や宮崎牛、マンゴーなどの農産物ともうまく噛み合って前へ進んでいる状況の中、いまから挽回していくのはかなり厳しい状況であることは事実です。だからこそ、例えば
リンク: 輪になろう日本酒.
のような企画があった場合にはもっと積極的に参加をして顔を出していくことが重要なのではないかと思います。状況は厳しいですが、まだ立て直せるはずです。

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