リンク: 「芋」100%にこだわる全量芋焼酎 米トレーサビリティ法施行で注目度アップ : J-CASTニュース.
「全量芋焼酎」という表現を使っていますが、要するに芋麹で作られた芋焼酎ということです。酒文化研究所の山田聡昭氏のコメントとして
米麹を使わず、「芋麹」を使って醸造する手法で、前出の山田氏は、「発酵や仕込みの技術が進み、芋焼酎にあった独特の臭みが消えて華やかな香りの、すっきりとした味わいに仕上げることが可能になりました。スタイリッシュというか、水割りやロックでもおいしく飲めます」
というコメントがありますが、J-CASTが改変していたり、意味を間違えて記載しているのでなければ、専門家としては少しおかしい表現になります。
そもそも芋100%の焼酎は鹿児島県の国分酒造協業組合が1997年に世界で初めて研究に乗り出し、翌年に900ml瓶でわずか1000本というところからスタートした商品で、まだ十数年の歴史しかないジャンルです。世界初の全量芋焼酎がこの世に誕生した時点で、すでに「華やかな香りの、すっきりとした味わい」だったことは国分酒造協業組合のいも麹芋特設ページ」にも
「肝心のお味のほどは、「とてもいも臭い」と予想していましたが、以外とさらっとしていて、キレがあり、飲みやすいタイプに仕上がりました。
と記されています。酒文化について、こうしたメディア取材へ回答する専門家であれば、これくらいの知識は当然持っているはずで、まるでこの数年ですっきりとした味わいへ変化したかのようなコメントを出すのは見識を疑わざるを得ません。
また、全量芋焼酎だけがピュアであると誤解されかねないコメントも酒文化に関する専門家としては不適切です。そもそも芋焼酎は米麹にアルコールを生成させ、サツマイモと酵母で味わいを作り上げていくタイプの焼酎です。芋麹を使うこと自体が異例であり、もともとの文化にはなかったタイプの新しい焼酎です。「酒文化」として考えるのであれば、伝統的な製法のほうが「ピュア」であり、芋麹という手法はイレギュラーであるといえましょう。本来であれば、「酒文化」の専門家として、「芋焼酎というのはもともとタイ米を使用することが主流でそれはコストダウンというよりも米麹の生育にタイ米が適していたからである」ということをきちんと記事に盛り込んでいくような回答をするべきではなかったでしょうか。この記事では現在の消費者が持っている「コストダウンのためにタイ米を使用する」という誤解を解消することは不可能です。
酒文化研究所には専門家として、適切なコメントを回答するように強く求めたいと思います。