前割り焼酎を他人に呑ませると懲役刑!

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南九州(宮崎・鹿児島)の芋焼酎圏では、本格焼酎を事前に水で割っておき、アルコールと水を十分なじませてから黒ぢょかや鳩とっくりなどで温めて呑むという習慣があります。これを「前割り焼酎」「前割焼酎」「割水焼酎」などと呼んでいます。多くの本格焼酎がアルコール度数25度となっていますが、前割りしておくことでアルコールの度数は、例えば5:5で割った場合には清酒並みの12.5度くらいになります。風味を楽しみつつ、体にも優しい焼酎を呑むことが出来るという一種の「生活の知恵」で、芋焼酎が呑まれている地域では極めてポピュラーな文化です。南九州での焼酎文化を広めようとしている料飲店さんたちは、南九州での本格焼酎の呑み方を知ってもらおうといろいろなことを試されています。その一環で自分の店でも前割焼酎を出しているケースが多く見られます。
しかし、国税当局は薄められてしまっては酒類の消費が伸びず、税金が減少すると考えたのか、酒税法を改悪してとんでもない条文を紛れ込ませたのです。該当の記述があるのは酒税法第四十三条。この条文では酒類を製造したとみなす行為(みなし製造)がまとめられています。
この第四十三条の5には

第一項の規定にかかわらず、酒類の製造場以外の場所で酒類と水との混和をしたとき(政令で定める場合を除く。)は、新たに酒類を製造したものとみなす。この場合において、当該混和後の酒類の品目は、この法律で別に定める場合を除き、当該混和前の酒類の品目とする。

という規定があります。要するに酒類製造免許のない人や法人が水を混ぜたらそれは新しく酒を造ったことと見なすよ、というとんでもない規定です。
しかし、国税も大酒造メーカーや国外の蒸留酒メーカーには頭が上がらないのか、くだらない例外規定を設けています。それが同法同条10の

前各項の規定は、消費の直前において酒類と他の物品(酒類を含む。)との混和をする場合で政令で定めるときについては、適用しない。

という部分です。さらにこの条文でいう

政令で定めるとき

というのは、酒税法施行令第五十条13で定められています。その条文には

法第四十三条第十項 に規定する消費の直前において酒類と他の物品(酒類を含む。)との混和をする場合で政令で定めるときは、酒場、料理店その他酒類を専ら自己の営業場において飲用に供することを業とする者がその営業場において消費者の求めに応じ、又は酒類の消費者が自ら消費するため、当該混和をするときとする。

と書かれています。これならば注文を受けてから作ることが多い大手居酒屋の酎ハイやサワー類、高級ホテルのバーが提供するウイスキーの水割りなどは除外されるわけです。国内外の大メーカーから怒られないようにうまい抜け道を考えたものです。
先にも書きましたが割水焼酎は九州における飲酒文化の代表事例です。度数の高い焼酎を体に優しく飲むために自然発生した、本格焼酎の文化そのものといえます。これを税金のことしか頭にないこわっぱ役人どもが禁止するとは言語道断です。なぜ度数の高いアルコールを事前に割っておくことが「みなし製造」になるのか、梅酒のみなし製造もそうですが、文化を理解できない、ペーパー試験しか取り柄のない役人どもは今すぐ駆逐したい、そんな思いに駆られる出来事です。
さらにこの条文がひどいのは、もしこれを読んで下さっている皆様が前割り焼酎を造ったとして、それを自分や生計を一にする家族以外の他人と一緒に楽しもうとするとそれも法律違反となるということです。例えばバーベキューでキンキンに冷やした前割り焼酎を持っていく人がいますが、それを他の人にあげてしまうと法律違反となるのです。こんな変な話があって良いのでしょうか?
市井のこうした文化を大事に出来ないようで本当に「美しい国」は実現できるのでしょうか?私ははなはだ疑問です。割水という文化がしっかり理解される日まで、この問題は飲兵衛の立場から継続して取り上げていきます。
※その後国会で動きがありました。こちらで続報を書き、その後の動きにあわせてこちらを追記しました。

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